平安朝雅楽

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源博雅龍笛 ~蘇る最古の笛譜~ (フォンテック)
平安楽舎を主宰されている長谷川景光氏のCDです。
雅楽は時代とともに大きく変化しており、それをさかのぼって出来るだけオリジナルに近い形で再現しようというのが長谷川氏の試みです。詳しい内容はサーチエンジンで検索していただくと氏のホームページで公開されています。
平安、鎌倉、室町、江戸、近代と時代によって雅楽の譜面は同じ曲でも大きく変化しているようです。(要するに記譜されている音がどんどん増えている。) このCDでは長谷川氏は平安時代に使用されていた譜面として「新撰楽譜」を用いて、龍笛のソロまたは笙とのデュエットで演奏しています。
非常にシンプルな譜面のためゆっくりと押しながら音を出していき、ロングトーンからゆっくりと引いていくといった奏法で、非常に幽玄で美しい世界が繰り広げられています。今の雅楽で用いられるような、アテ(息を強く吹き込むスポルツァンド奏法)やアテ切り(奇数拍で切るアウフタクトのようなリズム)は用いていません。よって拍は強調されず、ひたすら静かに流れていきます。笛の奏法としてこのような吹き方は相当鍛錬されていないとできませんし、氏の龍笛の音そのものも非常に美しく、思わず時間を忘れて聴き惚れてしまいます。有名な「青海波」などはまるでヨーロッパの教会音楽のように響いています。(氏は上記「新撰楽譜」から小曲を抜粋して校訂した「新撰楽譜横笛小曲集」を出版されており、実は私も購入して同じように吹いてみましたが、結構しんどいです。)
長谷川氏のような試みは雅楽を学んでいる方々からは、賛否両論でしょうね。何といっても千年以上前から口伝で続いている音楽ですから全く変わっていないとは誰も言えないでしょうし、「新撰楽譜」に書かれている音が当時そのまま演奏されていたのか、それともメロディの大枠だけが書かれており別の装飾法があったのかもわからないでしょう。
ただ音楽の美しさと演奏の素晴らしさにおいて、私は絶賛いたします。