ブレッサンのヴォイス・フルート

Voice Flute (Tenor recorder in D)
after Peter Bressan (1663-1731, London)
by Von Huene, European boxwood, A=415Hz
 
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フォン・ヒューネ製作のヴォイス・フルートです。
(ブレッサンの製作したオリジナル楽器のレプリカ。 ヨーロッパ柘植製、A=415Hz)
ヴォイス・フルートというのは、バロック期において主にイギリスで使用されていた楽器で、要するにD管のテナー・リコーダーのことです。当時使われていたブレッサンやステインズビーの楽器が多数現存しています。
アルト・リコーダーと比べると音域が低いため、より深く、甘い音色を持っています。
この楽器の使用が明確に指定されている楽曲はデュパールの組曲他、僅か数曲しかありませんし、他にD管なんて移調楽器を何に使うの?と思われるかもしれませんが、ちょっと発想を変えると膨大なレパートリーがあるのです。 というのは、フラウト・トラヴェルソバロック・フルート)の曲が原調のまま簡単に吹けてしまうのです。
 
トラヴェルソの曲を短三度上げてアルト・リコーダーで演奏するということは18世紀当時から行われていました。
例えば、イ長調ハ長調ニ長調ヘ長調ト長調変ロ長調ハ長調変ホ長調、などなど。
これをやるためには、原調の楽譜を五線上で一段ずらす、すなわちト音記号ヘ音記号だと思って読み替え、♯を三つ減らす(あるいは♭を三つ増やす)ことで対応できます。ヘ音記号が読めればわざわざ楽譜を書き変えなくても、頭の中で移調して演奏することが出来ます。
ここで、運指を上記のアルト・リコーダーのままでヴォイス・フルートに持ち替えると.....ヴォイス・フルート(D管)はアルト・リコーダー(F管)より相対的に短三度低い楽器なので、あら不思議、原調に戻ってしまいます。
このように、ほとんどのトラヴェルソの曲を簡単な譜面の読み替えでそのまま演奏することが出来るのです。
 
ちなみに写真の楽器ですが、木目に入っている黒い筋の位置が、フォン・ヒューネのサイト(http://www.vonhuene.com/Default.aspx?tabid=151)に載っている見本写真と全く同じであり、どうやら同じ個体のようです。
 
最後に、製作者は違いますが、同じブレッサンのレプリカによるものすごく上手い演奏を