ステンベルゲンのアルト・リコーダー

Alto Recorder after Jan Steenbergen (1676 - 1730, Amsterdam) by Moeck, Boxwood, A=440

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baroque時代のオランダの製作家ヤン・ステンベルゲンのコピー。同時代の他の製作家の楽器に比べ、ウインドウェイが狭く、吹いた時の抵抗感が大きいのが特徴。メックではこのステンベルゲンモデルについて、現在アルトは作っておらず、ソプラノのみ入手可能です。

グレンザーのトラヴェルソ

Flauto traverso
after August Grenser (1720-1807, Dresden)
by Rudolf Tutz, Grenadilla, A=430/440Hz
  
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オーストリアの製作家Rudolf Tutz氏の手によるAugust Grenser (1720-1807, Dresden)のレプリカ。
430Hz/440Hzの替え管も作ってもらいました。クラシカル・トラヴェルソの代表とも言えるモデルで、バロック時代のものより内径が細く、高音域の吹きやすさを重視した設計。C.Ph.E.BachとかMozartを吹くのにピッタリ。
 
 
 

ステインズビー・ジュニアのアルトリコーダー

Alto Recorder
after Thomas Stanesby Jr. (1692-1754, London)
by Von Huene, European boxwood, A=415Hz
 
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トーマス・ステインズビー・ジュニア (1692-1754, London)作のアルトリコーダのレプリカ。
フォン・ヒューネ工房製作です。材質は茶色にステインされたヨーロッパ柘植でA415Hzです。
ステインズビー親子はブレッサンと同様、バロック時代のイギリスを代表する木管楽器製作者であります。父親の方のステインズビーとブレッサンがちょうどヘンデルの年代にあたりますので、それより1世代後なるのが、ステインズビー・ジュニアです。リコーダーとしては最後の年代といえるでしょう。
音色的にはブレッサンの線の太い、リーディーな音とデンナーの伸びの良さ、軽快さを併せ持ったような感じ
で、バロック時代のあらゆる音楽に適合する、非常に汎用性の高い楽器だと思います。
フォン・ヒューネのこのモデルを使った演奏は、ミヒャエル・シュナイダーのCDで聴くことができます。

ブレッサンのトラヴェルソ

Frauto traverso
after Peter Bressan (1663-1731, London)
by Von Huene, Ebony and Silver, A=415Hz
 
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この楽器はロンドンのVictoria & Albert Museumが所蔵する、バロック期イギリスの名工ブレッサン(Peter Bressan, 1663 - 1731)の手によるオリジナル楽器のレプリカで、フォン・ヒューネ・ワークショップの作。
黒檀に銀のリングを施してあり、ピッチはA=415Hzです。オリジナルは、黒檀の管体に銀の象嵌細工で幾何学模様が施された、大変美しい楽器です。(http://collections.vam.ac.uk/item/O58929/flute/
この楽器はブレッサンの残したただ一つの4分割トラヴェルソです。トラベルソが3分割から4分割に代わったのが1720年前後と言われていますので、ブレッサンの晩年の作品と推測されます。デザインはバロック時代の他の楽器と違い、太い、直線的なフォルムで、それを銀のリングがさらに強調しています。
音は形から想像される通り、太く、温かい響きで、なおかつレスポンスが良く、最低音から最高音まで良く鳴ります。

デンナーのアルト・リコーダー

Alto Recorder
after Jacob Denner (1681-1735, Nürnberg)
by Von Huene, European boxwood, A=415Hz
 
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フォン・ヒューネ製作のアルト・リコーダーです。(ヨーロッパ柘植製、A=415Hz)
この楽器は、18世紀ドイツ、ニュルンベルグの製作家ヤコブ・デンナー(Jacob Denner, 1681 - 1735)の手によるもののレプリカで、オリジナルはコペンハーゲンのMusikhistorisk Museumに保管されている1720年頃の作です。このオリジナルはデンナーの楽器の中でも最も優れた個体と言われており、現代の多くの製作家、メーカーが手本としているものです。
姿かたちはブレッサンなどと比べると、ほっそりスリムで優美な感じ。マウスピースは細長く伸びた独特の形をしています。
デンナーの特徴は、何といっても高音域の音の伸びと運動性のよさ。ブレッサンと比べるとボア内径が細く作られていることから、確かに高音域に有利な設計であり、どちらかというと低音域はマイルドな感じです。
同時期に活躍したテレマンの技巧的な作品は高性能なデンナーのリコーダーを前提に書かれたのではないかと言われています。(私にとっても実際のところテレマンを吹くのにはこのレプリカがベストです。)

ブレッサンのヴォイス・フルート

Voice Flute (Tenor recorder in D)
after Peter Bressan (1663-1731, London)
by Von Huene, European boxwood, A=415Hz
 
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フォン・ヒューネ製作のヴォイス・フルートです。
(ブレッサンの製作したオリジナル楽器のレプリカ。 ヨーロッパ柘植製、A=415Hz)
ヴォイス・フルートというのは、バロック期において主にイギリスで使用されていた楽器で、要するにD管のテナー・リコーダーのことです。当時使われていたブレッサンやステインズビーの楽器が多数現存しています。
アルト・リコーダーと比べると音域が低いため、より深く、甘い音色を持っています。
この楽器の使用が明確に指定されている楽曲はデュパールの組曲他、僅か数曲しかありませんし、他にD管なんて移調楽器を何に使うの?と思われるかもしれませんが、ちょっと発想を変えると膨大なレパートリーがあるのです。 というのは、フラウト・トラヴェルソバロック・フルート)の曲が原調のまま簡単に吹けてしまうのです。
 
トラヴェルソの曲を短三度上げてアルト・リコーダーで演奏するということは18世紀当時から行われていました。
例えば、イ長調ハ長調ニ長調ヘ長調ト長調変ロ長調ハ長調変ホ長調、などなど。
これをやるためには、原調の楽譜を五線上で一段ずらす、すなわちト音記号ヘ音記号だと思って読み替え、♯を三つ減らす(あるいは♭を三つ増やす)ことで対応できます。ヘ音記号が読めればわざわざ楽譜を書き変えなくても、頭の中で移調して演奏することが出来ます。
ここで、運指を上記のアルト・リコーダーのままでヴォイス・フルートに持ち替えると.....ヴォイス・フルート(D管)はアルト・リコーダー(F管)より相対的に短三度低い楽器なので、あら不思議、原調に戻ってしまいます。
このように、ほとんどのトラヴェルソの曲を簡単な譜面の読み替えでそのまま演奏することが出来るのです。
 
ちなみに写真の楽器ですが、木目に入っている黒い筋の位置が、フォン・ヒューネのサイト(http://www.vonhuene.com/Default.aspx?tabid=151)に載っている見本写真と全く同じであり、どうやら同じ個体のようです。
 
最後に、製作者は違いますが、同じブレッサンのレプリカによるものすごく上手い演奏を
 

ブレッサンのアルト・リコーダー

Alto Recorder
after Peter Bressan (1663-1731, London)
by Hans Coolsma, European boxwood, A=415Hz
 
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オランダのメーカー、ハンス・コールスマ製作のアルト・リコーダーです。
この楽器はバロック期イギリスの名工ブレッサン(Peter Bressan, 1663 - 1731)の手によるもののレプリカで、オリジナルはフランス・ブリュッヘン所蔵のもの。
無染色のヨーロッパ柘植に模造象牙の装飾リングを施してあり、ピッチはA=415Hzです。
オリジナルのブレッサンはバロック期の他の製作家の楽器と比べると、かなりリーディーな音色を持っていますが、この楽器はその音色がかなりうまく再現されていると思います。しかも音量があり、濃密で非常によく通る音なのでソロで使うのにピッタリですね。反面、リコーダーどうしのアンサンブルでは同じような傾向の楽器でないと浮いてしまいます。
実は昔、ブリュッヘンの演奏に傾倒していた時期があり、彼の演奏するブレッサンの音はLPレコードで良く聴いたものですが、この楽器を初めて手にしたときは、「あ~、この音、この音!」と思わず口にしてしまいました。
ちなみにオリジナルのブレッサンによるブリュッヘンの演奏はこちら